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ドラッカーが考える「事業継続」

2013年02月22日
最近、「事業継続計画(BCP)」と聞くと「お?」と引っかかるのは、ドラッカーの話ばかりしているからでしょうか。

ドラッカーは、企業という組織を「利益追求の手段」と捉えず、「社会における制度」として捉えています。
企業はなぜ社会に存在しているのか?社会における企業の役割とは何か?を追求していたのがドラッカーです。

繰り返しになりますが、ドラッカーは、「企業をはじめとするあらゆる組織(organ)が社会の機関(institution)である」と位置付けています。機関とは、社会になくてはならない「制度」であり、組織が存在するのは自らの機能を果たすことによって、機関としての成果を達成します。
つまり、企業、行政、病院、学校、教会、軍隊、NPO、家庭等々の社会に存在するあらゆる組織は、それぞれが果たすべき使命があるのです。組織の存在そのものが目的ではなく、組織というものはそれぞれの使命を達成するための手段に過ぎないということです。

そもそも企業とは、一個人である経営者の私的な営利体であるはずです。しかしなぜ企業は社会における役割を求められるのでしょうか。
かつて、19世紀の企業は小規模であり、つぶれたり解散したり売買されたりすることも当たり前でした。 企業家個人の行為とイコールだったわけです。
しかし、19世紀から20世紀にかけて、世の中は大量生産大量消費の社会に突入し、かつ、鉄道・通信の発達による市場の拡大が、企業規模を急速に巨大化、大規模化させていきました。こうした企業の「大規模化」が、単なる量的変化だけではなく、「企業の性格の変容」ももたらしました。これを「大企業化」といいます。その理由は下記のとおりです。

(1) 大規模化は莫大な資本が必要。資本調達のため株式を大量発行し、創業者やオーナーはその持ち株比率を低下させ、支配力を失っていった
(2) 市場の拡大に伴い、企業は高度かつ複雑な管理を必要とする「組織」となり、専門経営者により動かされていった
(3) 「組織」になったということは、企業活動が私的到富としての企業家の個人的行為から、複数の人間の組織目標達成のための協働行為になったということである。経営も、ヒト・モノ・カネを集め結合することから、組織の維持・発展=管理へと変化した
(4) 大規模化した企業に勤める人は増大するばかり。社会の圧倒的多数がサラリーマンとなった。企業に勤める人は、企業から収入を得るだけでなく、社会的地位や人間関係、やりがい・生きがいをも得るようになった
(5) 企業間のネットワークは緊密化・複雑化し、企業が相互に与えあう影響力も巨大になった
(6) 人々が望む福祉国家を目指すには、企業が生み出す富なくしては様々なサービスを十分に提供することが難しくなった

(出所)三戸 浩・勝部 伸夫・池内 秀己・『企業論 第3版』有斐閣アルマ,2011年。


こうして企業は何よりも「維持・発展」を求められ、つぶれることが許されない社会的「制度」となりました。 これが、永続企業体(ゴーイング・コンサーン)としての企業の姿です。そして、企業はそれまでの所有者・株主の「私的到富手段」であったものが、社会になくてはならない「準公的会社」となり、企業の目的も「利潤追求」から「企業の維持・存続」へと変容していったのです。

今日の企業がなぜ維持・発展、いわゆる「事業継続」を求められるのか。ドラッカーの問いかける「企業の社会的役割とは何か」からも理解できますね。

(参考および出所)P.F.ドラッカー『エッセンシャル版 マネジメント』ダイヤモンド社,2001年。三戸 浩・勝部 伸夫・池内 秀己・『企業論 第3版』有斐閣アルマ,2011年。
【浜松ドラマケ勉強会 主宰 道喜(どうき)道恵】



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投稿者:浜松ドラマケ勉強会 │ 09:18 │ コメント(0) │ 実践メモ
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