ホーム › 1冊の本にどっぷり浸かる~専門書の読み方~

2009年から2014年の間、26回にわたって開催されていた「浜松ドラッカー勉強会」の公式ブログです。ドラッカーの理念をベースに、経営やマーケティングに関して学ぶ場所でした。現在は開催されていません。

1冊の本にどっぷり浸かる~専門書の読み方~

2013年03月24日
1冊の本にどっぷり浸かる~専門書の読み方~


これは私が大学院生時代に参加していた授業で使っていた本です。三戸公先生の『現代の学としての経営』という本ですが、その授業では毎年、第1章「経営学の転生を求めて」という30ページの論文を毎週ほぼ半年かけて勉強していきます。30ページを半年かけるんですよ!
はじめはコピーしてもらった論文で勉強していたのですが、同じ内容でも毎年授業に参加していたのでボロボロになってしまい、本を買って使っていました。

浜松ドラマケ会では、ドラッカー本を中心にビジネス書を深く勉強しているのですが、時間が足りないこともあり、あまり細かく突っ込めていないなぁ、と反省することもあります。(それでも、スパルタ勉強会としてウワサが広まっているらしいですが・・・)

しかし、私が実際に学んだ方法は、1時間半の授業で1ページも進まないことは当たり前でした。
どういうことかといいますと、例えばこんな感じです。
いまや、われわれは、組織社会のまっただなかに生きている。人間の主要な社会的行為は、いずれも巨大なピラミッド型の組織でもって営まれるにいたった。企業、行政体、裁判所、軍隊、政党、労働組合、学校、病院、宗教団体、研究所、芸術団体、慈善団体さえピラミッド型組織でもって運営せられるにいたった。人は、管理・経営の“うち”と“そと”に立つ。
(引用)三戸公先生『現代の学としての経営』文眞堂,1997年,3ページ。


ここではこの文章を説明するために、1文ごとに番号を振ります。
 (1)いまや、われわれは、組織社会のまっただなかに生きている。
 (2)人間の主要な社会的行為は、いずれも巨大なピラミッド型の組織でもって営まれるにいたった。
 (3)企業、行政体、裁判所、軍隊、政党、労働組合、学校、病院、宗教団体、研究所、芸術団体、慈善団体さえピラミッド型組織でもって運営せられるにいたった。
 (4)人は、管理・経営の“うち”と“そと”に立つ。

さらっと読めばそのまま流れていきそうですが、質問ポイントはたくさんあります。
 (1)「組織社会」とは何か?「組織」とは?「社会」とは?「まっただなか」とはどういう意味か?われわれが組織社会のまっただなかに生きているというのはどいうことか?「組織社会」はドラッカーも言及しているが、三戸先生とドラッカーのいう「組織社会」の類似点と相違点は?
 (2)人間の「社会的行為」とは何を指すのか?「ピラミッド型組織」とは?「社会的行為」が「ピラミッド型の組織」で営まれるとは?「至った」ということはそれまでどうだったのか?
 (3)非営利組織がピラミッド型組織であるというのはどういうことか?
 (4)「管理・経営の“うち”と“そと”」とは何か?その「“うち”と“そと”」に立つとはどいうことか?「管理・経営」とはマネジメントと言い換えてもいいのか?
まぁ、こんな感じで教授から質問が飛んできます。これに答えられなかったら「また来週~~」です。

それから、この1段落の中にある4つの文章が、どういう関係になっているのか構造はどうなっているのかを考えます。
 (1)われわれは組織社会に生きている。→問題提起
 (2)人間の社会的行為は組織、しかもピラミッド型組織で営まれる。→(1)の追加説明
 (3)営利非営利問わずあらゆる組織はピラミッド型。→(2)の具体的な説明
 (4)人間は、管理・経営からのがれられない。→結論

つまり、構造図で示すとこんな感じ。

 (1)→(2)→(4)
    ↑
    (3)

こんなことを1段、1節、1章、そして、本全体でやっていきます。そりゃ時間かかりますよね。
でも、専門書を読み理解し、著者の主張と結論、そして全体の理論構造を理解する恰好の訓練となりました。
今は、おかげさまで年を重ねたこともあり、細かい用語をチェックしなくても経営学の専門用語は大体わかりますし、論理構造もここまで分解しなくても理解できるようになりました。

浜松ドラマケ会では、参加者のみなさんにも大学院生バリに本を読んでレジュメを作って、発表して質疑に耐えてもらっています。よく「著者になりかわり発表してね」とお願いしていますが、慣れない方にとっては大変なことでしょう。

1回本気で選んだ本と向き合い、じっくり腰を据えて勉強したものは、自分にとっての理論の土台となるでしょう。そして、そのあとのモノの見方や本の読み方がガラッとかわるのです。何人もそういう人たちを見てきましたので、アナログな勉強法ですが自信をもっておススメします。
毎週のようにいろんなビジネスセミナーを巡っている方をお見かけしますが、1冊の本にどっぷり浸かってみてはいかがでしょうか。ドラッカーの著作はどれも真摯に向き合うに足るものばかりです。流し読みするにはもったいないですよ。
【浜松ドラマケ勉強会 主宰 道喜(どうき)道恵】



浜松ドラマケ勉強会とは?

浜松ドラッカー&マーケティング勉強会

ドラッカーの理念をベースに、経営やマーケティングに関して学ぶ、オープン勉強会です。
浜松ドラマケ会公開講座は、基本奇数月の第三月曜日ですが、祝日の場合のみ翌週(第四月曜)になります。
どなたでもご参加いただくことができ、お申し込みはFacebookページのイベントで受け付けています。

⇒浜松ドラマケ勉強会Facebookページはこちら




同じカテゴリー(実践メモ)の記事
投稿者:浜松ドラマケ勉強会 │ 09:15 │ コメント(0) │ 実践メモ
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。

この記事へのコメント

上の画像に書かれている文字を入力して下さい
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。
削除
1冊の本にどっぷり浸かる~専門書の読み方~
    コメント(0)