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マーケティング界のドラッカー、セオドア・レビットの「近視眼的マーケティング」
2013年04月27日
先日、テレビで「補聴機能を備えた 聴こえるメガネ」を紹介していました。当勉強会に補聴器販売店の方がいらっしゃることもあって、「補聴器」と聞くとつい「なんだ?」と注目してしまう今日この頃。この「補聴機能を備えた 聴こえるメガネ」は、「聴こえるメガネ」をコンセプトに「綺麗なデザインの補聴機能を備えたメガネが欲しい!!」というお客様のリクエストに応えるため現在開発中なのです。
補聴器のプロからみるとこの商品は「まだまだ」だそうですが、補聴器の素人の私からみると「おぉ~スゴイ~!いいじゃん!」になります。この違い、わかります?
補聴器を使う状況にある人は、「補聴器という機械そのもの」が欲しいわけではなく、「耳が聞こえにくいという状況を解決する手段」であれば「なんでもいい」ので、補聴器に代わる商品やサービスが登場すればそちらに移るのです。
つまり、補聴器を必要な人の究極のサービスは、「補聴のための機器がなくてもクリアに音が聞こえる」ことです。イヤホン付メガネだとまだ不便や見かけの問題はあるかもしれませんが、消費者は現在ある補聴器と比較して購買の意思決定をするでしょう。
「マーケティングの近視眼が会社を滅ぼす」というと、経営者はドキッとするかもしれません。
1960年、マーケティング論のレジェンド、セオドア・レビット(1925-2006)は、「マーケティング近視眼(マーケティング・マイオピア)」という論文を発表しました。鉄道業界や映画業界などの実例をあげ、成功した企業が衰退していった原因のひとつは経営者が「マーケティングの近視眼」に陥ったからだと言っています。
マーケティングと販売は、字義以上に大きく異なる。販売は売り手のニーズに、マーケティングは買い手のニーズに重点が置かれている。販売は製品をキャッシュに替えたい、という売り手のニーズが中心だが、マーケティングは製品を想像し、配送し、最終的に消費させることによって、顧客のニーズを満足させようというアイデアが中心である。」つまり、経営者が近視眼的に状況判断をすることに警告をしており、既存の市場でいくら製品やサービス、流通構造などに手を加えようと、顧客のアイデアから出発すれば、競争する市場そのものが別の場所に移ってしまう、と言っています。1960年の論文ですから、50年以上前にレビットは今日でもなかなか達成できないマーケティングの中核概念について言及しているのです。
実は、このレビットは「マーケティング界のドラッカー」とも呼ばれています。
顧客重視の経営を最初に強調したのは、ご存じドラッカー。『現代の経営』(1954)ですよね。その「ドラッカー思想を研究し、マーケティング分野へと展開したのがレビットである」と、マーケティング研究の第一人者であるP.コトラーが評しています。
1950年代までマーケティングは単なる「販売」や「営業」、「広告」としてのみ理解され、今日のように経営戦略の主要機能とは位置付けられていませんでした。レビットは、マーケティングの重要性と顧客の視点から経営活動を捉えなおすことを明示しました。
また、学術研究よりも実学に貢献してきたこと、普遍性をは何かという問題意識を貫いたこと、などがドラッカーとの共通点であるといえます。
レビットは、マーケティング近視眼、マーケティングマトリクス、サービスの工業化、無形性のマーケティング、グローバル化の本質、差別化、関係性マーケティングなどなど、これらのコンセプトを1960年代から1990年代前半までに次々と発表しています。古いものとはいえ、今日のマーケティング活動に重要な視点を与える論文たちです。
ドラッカーもマーケティングは企業活動の機能の1つとして重要視していますが、実践的に現場に適用していきたい方やイノベーションのアイデア出しをしたい方、社会とマーケティングの関わり方を考えたい方などは、ぜひレビット理論に触れてみてください。
【レビットの主要な著作】
◆『T.レビット マーケティング論』ダイヤモンド社,2007年
→Harvard Business Reviewへ寄稿した全25本の論考を収録。
http://www.amazon.co.jp/dp/4478002371
◆『マーケティングの革新―未来戦略の新視点』ダイヤモンド社,2006年
http://www.amazon.co.jp/dp/447850265X
◆『レビットのマーケティング思考法―本質・戦略・実践』ダイヤモンド社,2002年
http://www.amazon.co.jp/dp/447850198X
【浜松ドラマケ勉強会 主宰 道喜(どうき)道恵】
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